知っておくべきジャガイモの病気!【詳細編:前半】

知っておくべきジャガイモの病気!【詳細編:前半】

ジャガイモの主な病気として、そうか病、乾腐病、軟腐病、疫病、モザイク病、青枯病が上げられます。その詳しい原因と対策方法とについて、前編・後編に分けてわかりやすく解説します。

そうか病

ジャガイモそうか病とは

そうか病は、ストレプトマイセス属の放線菌(細菌)が原因で起こる病害です。塊茎に5~10mm程度のコルク化したあばた状の病斑が発生するのが特徴です。食味は変わらないため、皮を剥けば食べることができます。しかし、見た目が悪くなるので商品化できなくなり、多発した場合に被害が大きくなります。

発生条件

そうか病は、以下の条件で発生しやすくなります。

  • 乾燥している気候
  • アルカリ性土壌(pH6.5以上で多発

対策を行わないと、長年被害を受け続けることになります。ジャガイモのほか、ダイコンやカブ、ゴボウなどの根菜類も病斑を発します。

防除方法

植物がそうか病を発病しているときには、主因(病原体)・誘引(環境)・素因(宿主植物)の三条件が揃っていることになります。病害を防除する際には、これらの3つの要因に着目して状況を改善していくのが基本的な考え方となります。

まず、主因である病原体を減らすことにつながる予防策として「消毒した種イモを使うこと」や「連作を避けること」が挙げられます。
感染している種イモを使うと、土壌が汚染されて子世代にも伝染してしまいます。消毒した種イモを使うようにしましょう。

また、連作を行うと病原体が好む環境を与え続けることになり、病原菌の増殖に寄与してしまいます。植物栄養学の観点からも、連作によって土壌中の栄養バランスに偏りが生まれるため、可能な限り避けるようにしましょう。
ジャガイモはナス科なので、トマトやナス、万願寺トウガラシ、ピーマンなど他のナス科作物も含め3年程度は間隔をあけて栽培するようにしましょう。

※連作することによる弊害についてはこちらの記事をご参照ください。

また、誘因と素因に関わる予防策としては、「未熟な堆肥を加えない」ということも重要になります。
堆肥は微生物が有機物を分解することでつくられます。この働きを発酵と呼ぶこともありますが、発酵は分解されやすい糖やアミノ酸から行われ、続いてペクチン、セルロース、リグニンと順に進んでいきます。
それぞれの成分を分解する微生物は異なるため、順に分解が進むことで最終的には多様な微生物相が形成されます。

しかし、未熟な堆肥では、ペクチンやセルロース、つまり植物細胞壁の分解が終わっていない状態にあると考えられます。そうだとすると、このとき堆肥内ではペクチン分解菌が優勢である可能性があります。仮にペクチン分解菌を多く含む未熟な堆肥を投入すると、植物の根の細胞壁が溶かされ、病原菌の作物への侵入を許してしまうことになります。
そうか病以外の病気の予防においても、植物に傷を付けないことはとても重要です。未熟な肥料を入れていたずらに植物を弱らせないようにしましょう。

「消毒した健康な種子を使う」、「連作をしない」、そして「未熟な堆肥を投入しない」。この3点は、どの病気においても感染を予防する上で重要な考え方になります。

環境誘因を小さくするような防除としては、病原体が好む環境を作り出さないことが重要になります。そうか病においては、

  • 地温の上がりすぎに注意する
  • 土壌の乾燥を避ける
  • 石灰資材の多用を避ける

ということがポイントになります。

乾燥をさけるためにはマルチが有用ですが、黒マルチは高温になる可能性が高いため、保水性のある不織布を利用するなどして土壌性を改良する方法が効果的かもしれません。

乾腐病

ジャガイモ乾腐病

乾腐病は、フザリウム属菌という放線菌により引き起こされる病害です。ジャガイモにおいては、塊茎内部がところどころ黒変〜褐変するという病状が見られます。

病原体は根から侵入し、腐敗させることなく導管部を褐変させます。これにより、水分や養分の流れが阻害され、植物体全体には以下のような症状が現れます。

  • 生育不良
  • 下葉から上葉に順に黄化
  • 枯れや枯死

発病した場合、その個体が出荷できなくなるだけでなく、土壌伝染病として被害が拡大する可能性があります。

ジャガイモの他にもダイコンやカブ、キャベツなどに発症しますが、フザリウム属菌は限定された種のみに感染します。この性質は寄生性分化と呼ばれており、作物ごとに感染するフザリウム属菌が異なることを意味しています。

発生条件

乾腐病は以下の条件で発生しやすくなります。

  • 地温:25〜27℃
  • (赤土や砂質)

防除方法

乾腐病を予防するためにも、

  • 消毒した種イモを使う
  • 連作を避ける
  • 未熟な堆肥を加えない 

ことが重要になります。

また、乾腐病の環境誘因を小さくするためには、

  • 土壌をアルカリ性に調整する
  • センチュウ対策をする  

ことがポイントになります。

乾腐病を防ぐために土壌pHを調整する際には、転炉スラグが有用です。通常、pHをあげるためには石灰資材を用いる場合が多いですが、石灰資材を使うと土壌中の陽イオンのバランスが乱れ、作物に必要な微量必須元素が欠乏する可能性があります。
転炉スラグは、酸化カルシウムの他に鉄、マンガン、マグネシウム、リン酸、ホウ素などを含んでいるため、微量必須元素も補いながらpHの改善を行うことが出来ます。

また、乾腐病は傷口から植物体内に侵入することで感染します。植物に傷を付けないために、センチュウ対策をすることも重要になります。

ジャガイモを掘り出すときも、傷が付かないように気をつけて収穫し、貯蔵中には糸状菌が好む高温多湿な状態にならないように注意しましょう。


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軟腐病

軟腐病とは

カビによって地下部から腐敗が始まり、やがて地面近くの下葉にも水浸状の病斑が現れて強い臭いを放ちます。じゃがいもだけでなく、レタスやキャベツなどでも多く発生します。水はけが悪い土壌や高温多湿な環境の中で発生しやすくなります。

発生条件

乾腐病は以下の条件で発生しやすくなります。

  • 地温:30〜35℃
  • 多湿
  • pH:6〜7

土壌細菌は基本的に、高温多湿でpHが中性〜微アルカリ性の土を好む傾向にあります。夏に播種や定植をすると、発病する可能性が高まり、発症した場合に受ける被害も大きくなります。細菌は植物の根圏で増殖し、雑草の根圏で越冬することが知られています。

防除方法

軟腐病の環境誘因を小さくするためには、

  • 水はけの良い土壌づくり
  • 地温の上がりすぎに注意する

の2点がポイントになります。

軟腐病菌は多湿を好みますが、糸状菌は乾燥を好むことからも、水はけがよくて保水力のある土壌を目指すことが重要であると考えられます。
また、雨の日に収穫することは避けて、貯蔵前には風通しの良い場所で日光に当てて乾燥させましょう。

ひとたび発生すると防除が難しい軟腐病ですが、殺菌剤以外にも、植物防御活性剤や生物的防除剤も販売されています。上手に活用して被害の拡大を防ぎましょう。

おわりに

どの病気においても、病原体の密度を下げ、主因を少なくすることが最も効果的な予防方法になります。本サイトの農薬データベースの対象農作物欄に「じゃがいも」、適用病害虫に病害名を入力すると、病気に適した薬剤を検索することができますので、そちらの情報も参考にしてください。

ジャガイモの害虫に関するこちらの記事も知識として理解しておきましょう。

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